超音波探傷器に必要な性能
同じ試験体を同じ規格を適用して超音波探傷した際、違う探傷装置を使用しても同様の探傷結果が得られる必要がある。
そのため探傷器や探触子には必要な性能が各規格で規定されている。
JIS Z 3060「鋼溶接部の超音波探傷試験方法」では探傷器に必要な性能として以下のように規定している。
- 増幅直線性 ・・・・ ± 3 % 以下
- 時間軸直線性 ・・・ ± 1% 以下
- 感度余裕値 ・・・・ 40 dB 以上
これら3つの項目については1年以内ごとに定期点検を行い、その性能が維持されていることを確認する必要がある。
表面波
表面波とは屈折角が横波の臨界角になると発生し、材料の表面層だけを伝搬する超音波のこと。
表面波の粒子の振動様式は、縦波と横波の振動を混ぜたような動きをする。
音速は横波よりも少し遅く、だいたい横波の音速の0.9倍となる。
この表面波は、表面から1波長程度の非常に浅い層を伝搬する。つまり周波数を低くして波長を長くすることで、より材料内部を表面波が伝搬することができる。
表面波は、鋼材や圧延ロールの表面きずの検出や表面割れの深さ測定に利用される。
しかし、試験体表面の凹凸や、たった一滴の油や水などからも超音波が反射してエコーが現れてしまうため、探傷の前に試験体の表面を滑らかに、かつ清浄にしなければならない。
クリーピング波
クリーピング波とは試験体の表面を沿って伝搬する縦波のこと。
クリーピング(Creeping)とは「這って進む」という意味。
縦波斜角探触子の屈折角を90°に設定すると、実際には縦波が約75°の方向に放射される。このうち一部の縦波が探傷面に沿って伝搬し、これをクリーピング波という。
このクリーピング波は表面及び表面近傍のきずの検出に優れており、溶接部の止端割れなどの検出に良いとされている。
クリーピング波探触子では同時に横波も発生しており、この横波は試験体底面でモード変換し、二次クリーピング波として試験体底面を伝搬する。
クリーピング波は表面波と違い、試験体表面の凹凸や、接触媒質からの反射や散乱がない。しかし、同時に横波や二次クリーピング波が発生するため非常に複雑となる。